スポーツ写真を守りたい

執筆者:田口有史2009年4月号

「スポーツを撮るカメラマンなんていなくなるかもしれない」 近年、華やかなスポーツイベントの舞台裏で、こんなセリフを耳にすることが多くなった。 私がスポーツ撮影を仕事にするようになって二十年近い。この間にスポーツフォトグラフィーの世界は二度、大きな変化の波を迎え、世界経済危機とも重なった現在の二つ目の大波の中で、フリーランスのスポーツフォトグラファーは“絶滅危惧種”になってしまった。 一度目の波はカメラのオートフォーカス化だ。それ以前のスポーツフォトの世界は、まず「動いている被写体にピントを合わせることができる」というのがプロとしての第一条件だった。 F1のレースカーやスキーの滑降のように何百キロもの速度で走る被写体もあれば、私の専門のアメリカの三大プロスポーツ、すなわち野球、バスケット、アメフットのように、選手の瞬時の方向転換にも付いていきながらシャッターチャンスを捉えなければならない場合もある。プロは、そんなスピードや意外な動きに対しても、ピントを手で合わせながらシャッターを切る。あるいは、被写体が動いてくるポイントを経験から予測し、事前にピントを合わせておき、そこに被写体が来た瞬間にすかさずシャッターを押す。

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