まるで猿芝居ではないか。金融危機への対応を口実に、政策投資銀行を再びオモチャにしようと策謀する面々。ツケは国民に――。「未曾有の不況下で解散・総選挙が控えている。ノンバンクや不動産企業の経営もぐらついているが、こんな状況で大企業を倒産させることは許されない。自分の庭先ばかりきれいにしたがる日銀はもう当てにしない。民営化計画の抜本的な見直しも視野に、政投銀が政府系金融機関として“丸抱え”の大企業支援をやれないか」 企業の決算期末が目前に迫った三月はじめ、自民党の政務調査会幹部らは、旧知の財務省の官房や理財局の幹部を呼び、こう持ちかけた。経済財政担当相と財務相、金融担当相の三ポスト兼務となった与謝野馨氏も、この自民党幹部の主張に呼応。日本政策投資銀行(政投銀)の大企業向け信用供与額を現在(約十二兆円)の三倍近い三十兆円規模に拡大するように財務省に指示した。 小泉政権が二〇〇五年に決めた政策金融改革で、政投銀の完全民営化は、竹中平蔵元総務相らを中心に強硬に推進された。そこには、財務省による支配を突き崩す狙いもあった。財務省には、谷垣禎一財務相(当時)を弾除けにしつつ激しく抵抗したにもかかわらず、小泉―竹中ラインに押し切られた苦々しい記憶が今なお鮮明だ。

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