いかに豊かになろうと、大国の装いを身にまとおうと、どうしようもないものがある。これが中国の“断面図”だ。 南シナ海に浮かぶ海南島は、中国最南の省、海南省を成す。日本の九州よりやや小さい。三月、この島の東方市感城鎮に属する感城、宝上の二つの村を舞台に数千人規模の暴動が発生。一人が死亡、少なくとも九人が重軽傷を負うという「惨劇」が起きた。 三月二十三日、感城村と宝上村の中学生各一人が東方市の中心部に出かけ市の民族中学校の生徒と口論し殴られたのが発端。その夕方、「宝上村の生徒に殴られた」とする感城村の生徒の親ら二十人余りが鎮政府に抗議に押しかけ、やがて数百人に膨れ上がった群集は鎮政府事務棟に放火、さらに向かいの感城辺防派出所の宿舎やパトカーなどを燃やした上、村境近くの宝上村の旅館にまでなだれ込み設備を打ち壊した。 翌日、東方市は派出所長らの解任を発表し「現地政府と幹部の全力を挙げた指導により当面、事態は収まった」と公表した。だが二十五日、こんどは宝上村民が感城村の住民が運転するトラックを襲って燃やす。怒った感城村民千人ほどが自家製火炎瓶やナイフ、棍棒を手に宝上村を襲撃、「一キロにわたり」乱闘騒ぎを繰り広げ、防暴警(暴動鎮圧専門警察隊)が出動して、ようやく両村民を引き離した。それぞれの村人は自警団を作って武器をもち村内を巡回。省政府は千人以上の警察部隊を現地に投入、村境の橋には防暴警よりさらに重装備の特警(特殊警察)車七両と数百人の特警隊員が張り付いている……。

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