東京都心部のランドマークとして威光を放ってきた大型オフィスビルが深刻な空室増加に悩んでいる。 その象徴は森ビルが運営する六本木ヒルズで、いまや坪当たり賃料は二万円台前半と、六万円を超えた二、三年前から激落。二割の空室を抱え、稼働床は実質六割程度ともいわれる。 不動産市場調査会社シービー・リチャードエリス総合研究所によると、ヒルズとほぼ同じ位置づけの「Sクラス」ビルにおける三月期空室率は六・五%。ビルの経営状態を判断する空室率の境目は五%と言われるが、それを大きく逸脱した六本木ヒルズはまさに大不況の真只中にあるといえる。破綻したリーマン・ブラザーズは、この三月中に退去した模様だ。 一方で、新たに入居するテナントもなくはない。苦境に立つ米系企業に代わり日本進出を図る欧州勢だ。たとえば、独ウェストエルビー証券系の金融子会社や独デカ・バンク系の不動産投融資会社といった面々。ドイツ系の多くは、短期高収益型の米系ファンドのスタイルとは対照的に、個人投資家から集めた資金を安定配当型の不動産投資ファンドで運用する。六本木ヒルズのテナント動向は、不動産・金融不況の今後を読む先行指標と言えるかもしれない。

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