女性政治家の活躍を押すもの、阻むもの(上)

執筆者:三牧聖子2022年4月23日
 

*この記事は2月10日に行われた講演内容をまとめたものです。各データは同日時点の数値に基づきます。

西村博一(フォーサイト編集長):本日のフォーサイトセミナーは、高崎経済大学准教授(当時)の三牧聖子先生を講師にお迎えして、「女性政治家の活躍を押すもの、阻むもの」をテーマにお届けします。

 今回のテーマの中心人物を1人挙げるとすれば、アメリカ副大統領のカマラ・ハリス氏かと思います。アメリカ初の女性副大統領となったハリス氏は、就任当初は国民の高い支持を得ましたが、政権発足から1年を経た現在、支持率低下に悩むジョー・バイデン大統領をも大幅に下回る支持率という状況になっています。それはなぜなのか、彼女が女性だからなのか、あるいは、インドとジャマイカからの移民の娘として生まれた、という出自に影響されているのか。

 こうした問題を考えるにあたり、今のアメリカ政治において大きな議論を呼んでいる「アイデンティティ政治」をキーワードに、三牧先生にお話しいただきます。

本質主義の罠に陥らないこと

三牧聖子:カマラ・ハリスは黒人・アジア系・女性として初めてアメリカ副大統領になりましたが、就任から1年を経て、支持率が低下しているバイデン大統領よりもさらに低い28%の支持率しかありません(当時)。

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