会談するロシアのラブロフ外相と中国の王毅外相(2021年3月) ©AFP=時事

中国経済はロシア経済の10倍

岩田清文(元陸上幕僚長):次に、中国や北朝鮮が、今回のウクライナ戦争をどう評価して、どのような新たな現実認識を得ているかという問題について。もちろん推測にはなりますが、考えていきたいと思います。武居さんからお願いします。

武居智久(元海上幕僚長):まず、中国・北朝鮮ともに、戦略核兵器を持てば、非戦略核兵器による恫喝で対象国の行動を抑止できる、あるいは特定の行動を強要できると考えた可能性がある。ですから、岩田さんが仰ったように、中国は戦略核兵器の増強を急ぐでしょう。北朝鮮も、兵力差があっても戦い方次第では負けない可能性があると、勝手に思ったかもしれない。

 それから中国については、オリンピック前の首脳会談でロシアと無制限のパートナーシップを再確認しているのですが、これは誤りだったと考え直しているかもしれません。戦況が長引くほど、今中国が取っている「中道」を維持するのは難しくなっていくだろうと思います。中国は、ロシアや北朝鮮と組んでアメリカや西側を押し戻そうとする考えを持っていたと言われますが、実際にロシアが戦争を起こしたことで、これを続けることが難しくなった。また、中国はロシアから武器等の技術を輸入していますが、その有効性に疑問を持ったでしょう。後方支援の重要性にも気づいたはずです。今、中国軍が建設中の戦力投射支援能力とは、軍民融合、つまり民間輸送力の動員体制を強化するというものですが、これをさらに加速するでしょう。要するに、台湾有事の際は民間船舶を大量に徴用して輸送や後方支援に使う。中国海軍だけでは兵員2万人弱しか運べません。戦車や装甲車も運ぶとなると兵員数とトレードオフになるので、実際にはかなり限られた人間しか運べないんですね。

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