ミクロの視点から見たフランスの少子化対策

執筆者:渥美由喜2009年5月号

一昨年、昨年と、フランスで計一カ月強の取材をした。フランスはしばしば「子育て支援大国」と言われるが、その多くは「国の制度がこんなに整っている」、「これほど多くの財政投入がなされている」というマクロの視点による言説が多く、生活者・勤労者のミクロの視点によるものは少ない。そこで、フランスの一般家庭や従業員および自治体の取り組みについてヒアリング調査した次第である。 まず、現在わが国で都市部を中心に問題となっている「待機児童」は、パリ周辺でも問題となっていた。長らく出産ブームが続いており、主に〇―二歳児向けの保育施設の供給が追い付かないことが背景にある。 では、フランスではこれをどのようにして解決しているのか。自治体が認定する「保育ママ」が自宅などで一人当たり最高三人までの子どもを預かっている。現在、〇―二歳児の約二割が保育ママに預けられている。 次に、三歳から五歳までの児童の九五%は、「保育学校」(日本での幼稚園に当たる)に入学しており、義務教育に近い状況である。働いている親を持つ子どもは保育学校や小学校の授業が終了した後、放課後児童クラブ(学童保育)や余暇センターと呼ばれる自治体が運営する受け入れ施設に行くことも出来る。フランスの保育学校や小学校は週休三日制のため、休みの水曜日や土日、そして長期休暇中にもそれらの施設は提供されている。

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