21世紀型の「独裁者」たちは情報操作で民主主義的統治の「ふり」をする

Sergei Guriev & Daniel Treisman『Spin Dictators』

執筆者:植田かもめ2022年7月17日
 

 元欧州復興開発銀行のチーフエコノミストで、現在はパリ政治学院で経済学教授を務めるセルゲイ・グリエフ氏と、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の政治学教授のダニエル・トリーズマン氏による本書『Spin Dictators』によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支持率は実に過去20年にわたって60%を下回った事がないという 。ウクライナへの武力侵攻を決断した独裁的な暴挙を見ると、なぜ彼がそれだけの支持を集めるのか疑問に思うかもしれない。しかし、武力侵攻開始後も、若干の変動はありながらも彼の支持率は非常に高い水準を維持している。

 では、この支持率は国民の意見が一方的に抑圧された結果の強制的なものなのだろうか。本心では不支持でありながら、ロシア国民は仕方なく支持を表明しているのだろうか。本書はそうではないと分析する。単純に言って、プーチン大統領はいまも、多数のロシア国民から好かれているのだ。

 20世紀における独裁体制とは、恐怖による支配だった。ヒトラーやスターリンや毛沢東など多くの独裁者が、言論を抑圧して国内のコミュニケーションを監視し、暴力とイデオロギーによる統制を行なった。北朝鮮の金正恩やシリアのアサド政権はこうした旧来型の恐怖政治を現在も行なっている例である。

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