二国間・多国間の自由貿易協定(FTA)締結が進む東アジア。この流れに取り残されているのが台湾だ。これまでにFTAを締結したのはパナマやグアテマラなど国交を持つ中南米五カ国のみ。本誌四月号で加瀬友一氏が指摘しているように、締結してもFTAを遵守せず、保護主義に傾くインドネシアやフィリピンの事例もあり、東アジアの経済連携がどこまで進むのかは不透明だ。しかし、日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などからなる東アジアの自由貿易体制から疎外されれば、台湾の輸出競争力は低下する可能性が高い。 この状況に台湾当局も手をこまねいているわけではない。中国本土との間で貿易自由化などを進めるための「経済協力枠組み協定(ECFA)」を結ぶ方針で、馬英九総統は、五月にも開かれる中台窓口機関トップ会談で意見交換し、今年後半に具体的な成果を出したい考えだ。 しかし、台湾では中国本土との経済協定締結を警戒する見方も根強い。背景には、二〇〇三年に中国本土と「経済貿易緊密化協定(CEPA)」を結んだ香港で、経済の対中依存が加速度的に進んでいる現実がある。 CEPAは商品・サービス貿易の自由化や投資の円滑化を目的とした一種のFTA。だが、香港観光業の下支えのため中国本土からの個人旅行解禁を盛り込むなど、実質的には中国当局の香港に対する経済支援だ。

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