首相官邸の「間取り」を軽んずるなかれ

執筆者:石山新平2009年5月号

ただでさえ“勉強不足”の政治家、分断されたら官僚の情報操作のエジキだ。政治主導にしたければ、まずは官邸の間取りを見直せ。「首相の政務秘書官を現在の一人から民間人十人以内に拡大」「各省庁に計百二十六人の政治家を配置」「全閣僚は首相官邸の大部屋に」――。 民主党内で、政治主導による「霞が関ガバナンス(統治機構)」構想が動き始めた。いかに官僚をコントロールするか。もちろん、政権獲得を前提とした青写真である。 熱心に取り組んでいるのが同党の長妻昭衆議院議員ら。消えた年金記録を追及した際、事実関係を頑なに認めない霞が関官僚と闘った経験を持つ。歴代の大臣が各省庁に常駐するうちに、いつの間にか省益の代弁者になる姿を目の当たりにしてきたが、年金問題で官僚の「ご説明」攻勢を受け、その底力を思い知らされたという。 自民党議員の間からは、「政権を取った気になって浮かれている」「気が早い」といった批判の声も聞かれる。だが、独自の政策を実行するには官僚機構の抵抗を乗り越える態勢を作る必要がある、という一点については、バラバラと言われている民主党幹部も一致している。 菅直人代表代行は、かつて厚生大臣として薬害エイズ問題で消えた資料の発掘に当たった際、官僚の猛烈な抵抗に遭った経験を持つ。当時の経験を『大臣』という本にまとめている。大臣に就任すると官僚が次々に大臣室にやって来て説明する。官僚たちが「大臣レク」と呼ぶものだ。「これは洗脳にほかならない」と菅氏は振り返る。

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