対ロシア制裁は「効いている論」と「効いていない論」

Foresight World Watcher's 7Tips

執筆者:フォーサイト編集部2022年8月26日
ロシア経済の実態とは  (C)APHIRAK/adobe.stock.com

 今週もお疲れ様でした。今週は海外メディアを賑わせた2つの論争を紹介します。1つは、ロシアに対する経済制裁の実効性について、もう1つは中国限界論の真偽について。フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事7本、皆様もよろしければご一緒に。Hope you have a great weekend!

 

Are sanctions on Russia working?【Economist/8月25日付】

Who's Winning the Sanctions War?【Bruce W. Jentleson/Foreign Policy/8月18日付】

 今回は米英メディアで眼にとまった論争を2件、紹介しよう。

 1件目のテーマは「ロシアへの制裁は効いているのか?」。これは8月25日付の英「エコノミスト」誌の記事のタイトルでもある。

「ロシアへの経済封鎖は、世界第11位の経済大国であり、エネルギーや穀物などの輸出大国であるロシアの機能停止を目指すという新たな次元の制裁だ」
「問題は、その打撃が現実的でないことだ。IMF[国際通貨基金]は2022年のロシアのGDPが6%減少すると予測している。これは、3月に多くの人が予想した15%減や、[経済制裁を受けている]ベネズエラの不振よりはるかに小規模だ。エネルギー資源販売によりロシアの今年の経常収支は2650億ドルの黒字を記録し、中国に次ぐ世界第2位となると見られる。危機を乗り越えてロシアの金融システムは安定化し、一部の輸入品については中国など新たな供給元が見つかりつつある」
「制裁という兵器にはいくつか欠陥のあることがわかった。ひとつはタイムラグだ。西側が独占している技術へのアクセスを遮断しても、それが効果を発揮するまでに何年もかかる。独裁国家は資源を結集できるため、禁輸措置の最初の打撃を吸収するのに長けている」
「最大の欠点は、世界総生産の4割を占める100カ国以上の国々が、全面的であれ部分的であれ禁輸措置をとっていないことだ。ウラル産の石油はアジアに流れている。ドバイはロシアの現金で溢れ、エミレーツ航空などのモスクワ便は1日7便が利用可能だ。大半の国々が西側の政策に同調していないなかでは、グローバル化した経済はショックやチャンスにうまく適応している」

 ロシアに対する経済制裁について最近新たな事実が浮上したわけでもないのにエコノミスト誌が今このような記事を大々的に打ち出すことは、一見、不可思議に思われる。

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