ドイツ誌『Spiegel』のインタビューに答えるキッシンジャー元米国務長官(左)(「Spiegel International」HPより)

 冬が近づいている。ロシア・ウクライナ戦争と、エネルギー価格の上昇に揺れる世界にとって、この冬が今後の情勢の変化を見極めるための正念場になるだろう。

 私は、この夏にポーランドやスロバキアの国境地域を訪問し、国際機関の活動を視察した。その際に一番印象に残ったのが、インフラストラクチャーを破壊されているウクライナの人々に、この冬を乗り越えてもらうための人道援助の準備だった。

 戦況も、冬を見据えた動きが特徴的だ。ウクライナ軍がロシア軍の補給路を断ったうえで、南部のヘルソン奪還に向けた動きを強めている。秋の泥濘期から冬の凍結期にかけては、陸上兵力の展開の仕方が変わってくる。冬になる前に、ウクライナ軍がヘルソンを奪還するかどうかは、この戦争の行方に大きな影響を及ぼすことになる。

 ウクライナを支援する欧州各国では、政治的な変動なく冬を乗り切れるかが、大きな山になる。物価の全般的な上昇が続く。特にガソリンや光熱費などのエネルギー関係の価格上昇が激しく、冬期に貧困層への経済負担は大きく高まる。事態の悪化を狙って、ロシアはザポリージャ原子力発電所の操業停止を狙い、危険な火遊びを行っているようだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。