脳に生物学的な変化をもたらすのか、あるいは身体機能を失うことが人々を追い詰めるのか  (C)REUTERS

[シカゴ/ロンドン発(ロイター)]スコット・テイラー(56)は新型コロナウイルスから立ち直ることができなかった。2020年春に感染した後、約18カ月経っても回復せず、健康、記憶、そして金も失い、米ダラス近郊の自宅で自殺した。

「誰も気にかけてくれない。誰も話を聞いてくれない」

「洗濯もままならず、辛さ、疲労、背骨の上下の痛みがある。眩暈のように世界が回転し、吐き気、嘔吐、下痢の症状がある」

 テイラーは友人に宛てた最後のメッセージで、数カ月、場合によって数年続くこともある新型コロナの後遺症「ロング・コビット」に苦しむ何百万人もの人々の苦境を語った。

 2020年夏の一斉解雇でゲノム検査販売の仕事を失ったテイラーにとって、前職の保険が期限切れとなり社会保障給付の申請が却下されたことが分岐点となった、と家族は語る。兄のマーク・テイラーは「我慢の限界がきてしまったようだ」と話す。

米国の約450万人を失業に追いやった

 世界保健機関(WHO)によると、ロング・コビットは疲労感、認知障害、痛み、発熱、動悸など、200以上の症状(中には他の病気に似たものもある)があるため、診断が難しい複雑な病状である。

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