中朝貿易の「変化」が示唆する中露の政策転換

執筆者:三村光弘2022年10月26日
中国遼寧省丹東市の丹東駅貨物専用区域に停まる北朝鮮の貨物列車=2021年4月17日撮影(C)時事

 

 中国・遼寧省の丹東市と北朝鮮・平安北道の新義州市の間には、日本時代に建設された「中朝(朝中)友誼橋」があり、鉄道と道路で結ばれている。

 北朝鮮は2022年1月中旬、新型コロナウイルス(COVID-19)の防疫措置によって2年以上も封鎖していた国境を開き、中朝を結ぶ鉄道輸送を再開した。その後、4月下旬に中国側の丹東市でCOVID-19患者が発生すると鉄道輸送を停止し、8月初めの終息宣言を経て9月26日に再び鉄道輸送が復活した。

 筆者は中朝貿易の推移と鉄道輸送復活後の変化から、中国さらにロシアが北朝鮮に対する積極関与政策に転じた可能性を論じたい。

1. 制裁強化が中朝貿易に与えた影響

 中朝貿易は2000年代に入り徐々に増加してきた。

図1:北朝鮮から中国への輸出の推移
 

 北朝鮮から中国への輸出は、2011年に石炭を大量に輸出し始めてから増加し、2016年まで高いレベルを維持した(図1)。2016年の2回の核実験後、17年にかけて複数の国連安全保障理事会決議による国際的制裁の強化が行われた。これにより石炭や各種鉱物の輸出のほか、水産物や委託加工の衣類の輸出も制裁の対象となった。中国がこれらの決議に呼応し、国内的措置をとって制裁を実行することにより、17年以降は低調となった。

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