IAEAを使った欧米牽制もあり得てしまう[2022年10月11日、プーチン大統領と会談するIAEAのグロッシー事務局長(左)](C)AFP=時事 / Pavel BEDNYAKOV / SPUTNIK

   ロシア・ウクライナ戦争では核兵器の役割に注目が集まっているが、原子力発電所がロシア軍によって攻撃、占領されたことは、原子力関係者に大きな衝撃を与えた。これは、スリーマイル島、チョルノービリ(チェルノブイリ)あるいは東京電力福島第一の各原子力発電所で発生した事故とは異なり、武力攻撃により原子力安全、核セキュリティ(核物質防護)、そして保障措置が脅かされるという、前代未聞の事態だったからである。

   紛争下で原子力施設が武力攻撃にさらされる可能性については、確かに一定の認識はされてきた。また2001年の米国同時多発テロを受け、核テロのリスク対策も強化さたことは間違いない。しかし、いざウクライナにおいてチョルノービリが攻撃され、またザポリージャ原発がロシアによって占拠されるという一連の経緯の中で、IAEA(国際原子力機関)の役割にはおのずと限界があることが明らかになっている。

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