ウクライナのザポリージャ原発を占拠したロシア兵 ©EPA=時事

 

 ロシアがウクライナに侵攻して8カ月以上が経った。この戦争で懸念されている事態のひとつが、ロシアによる原子力発電所への攻撃である。ロシアは3月、ウクライナ南部への侵攻に併せてヨーロッパ最大級の南東部のザポリージャ原発を攻撃し、掌握した。稼働中の原発が攻撃を受けるのは史上初めてであり、8月下旬には同原発に対する砲撃で施設の屋根が損傷する等の被害が出た。

 この事態を憂慮したIAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長以下の調査団が入り調査を開始したが、原発への攻撃を止めるまでには至っていない。また9月にも、南部ミコライウの南ウクライナ原発の周辺でミサイル攻撃があった。原発への攻撃は明白なジュネーブ条約違反であるが、専制主義者にとって条約など紙切れに過ぎない。原発が攻撃され破壊された場合、放射性物質の拡散が起こり、隣国等広い地域に深刻な影響が出ることを改めて認識しておく必要がある。

激変したエネルギー政策の前提

 エネルギー政策の基本は、安全性を前提に安定供給、経済効果と環境適合性をバランスよく達成することだ。日本の戦後のエネルギー源としては、高度経済成長期には輸入石油が最も重要であった。しかし、1970年代の2度の石油危機を契機として、エネルギー安全保障の確保が最重要となった。さらに90年代、地球温暖化対策がエネルギー政策の重要課題に加わり、安定供給にも温暖化対策にも有効な手段として原子力発電が推進された。

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