ロシア・ウクライナ戦争の「新段階」

Foresight World Watcher's 5Tips

執筆者:フォーサイト編集部2022年12月16日
ロシア・ウクライナ戦争は正念場の冬を迎える(C)kovop58/shutterstock.com

 

 今週もお疲れ様でした。ロシア・ウクライナ戦争は、部分動員によって兵力不足を補ったロシアが現場の指揮系統、補給・調達の態勢、戦術の立て直しを図り、新たなフェーズに入ろうとしています。そのような中で注目を集めているのが、楽観論にくぎを刺すようなFA誌とFP誌の論考です。フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

Russia's New Theory of Victory【Mick Ryan/Foreign Affairs/12月14日付】

The Russian Army Is Preparing for a Fresh Attack【Maxim Samorukov/Foreign Policy/12月15日付】

「ロシアにノックアウトを宣告するのは早計だ。ウラジーミル・プーチン大統領は、侵攻を指揮する新たな軍司令官としてセルゲイ・スロヴィキン将軍を任命した。スロヴィキンは前任者よりも残忍で有能だとされる。彼はシリアでロシア軍を率いていたときに磨いた民間人中心の戦術で、ウクライナのエネルギーインフラの大部分を破壊する精力的で恐るべき空爆作戦を開始した。スロヴィキンが責任者を務めたヘルソンからのロシア軍の撤退は、キーウやハルキウ付近からの撤退の際とは異なり、指揮・統率がきちんと行われた」
「スロヴィキンの着任は、ウクライナにおけるロシアの戦略の新たな適応の前兆だ。プーチンはキーウを奪えないことを認識しているかもしれないが、最近(違法に)併合した4つの州(ドネツク、へルソン、ルハンシク、ザポリージャ)をすべて奪えるとまだ信じているのかもしれない。スロヴィキンは、こうした計画の重要な実行者だ。プーチンは、戦争が長引いて冬が訪れると欧州がウクライナへの多額の援助を停止し、ロシアからのガス輸入を復活させようとすることを期待している」

 ウクライナ戦争についてこのような見方を示すのは、元オーストラリア陸軍少将の軍事戦略家、ミック・ライアンだ。米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌に寄せた「ロシアの新たな勝利の理論」(12月14日付)は大きな注目を集め、同誌サイトの「最も読まれた記事」ランキングでトップに立った(米国東部標準時16日午前2時時点)。

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