デヴォンシャ公爵家(下)

執筆者:君塚直隆2023年1月25日
先々代がチャッツワース(写真=(C)Rob Bendall)事業に注ぎ込んで傾いた家産を、第8代デヴォンシャ公爵スペンサー・キャヴェンデイッシュが株式投資の成功で立て直した

首相に就任した第4代公爵

 公爵となったデヴォンシャ家が所有するチャッツワース・ハウスもロンドンの邸宅(デヴォンシャ・ハウス)も、やがてイギリス社交界の中心地へと位置づけられていった。

 イギリスの王家もハノーヴァー家に代わった18世紀前半に登場したのが、第4代公爵ウィリアム(1720~1764)である。21歳で庶民院議員に当選し、一躍若手政治家の中心的な存在となった彼は、父から公爵を引き継いだ翌年、1756年になんと首相にまでのぼりつめる。当時36歳での首相就任は史上最年少、現在でも歴代4位の年少記録である。ただし、その年から始まった七年戦争(1756~63年)に関わるイギリス政治の混乱により、政権はわずか7カ月で崩壊してしまう。

奔放な夫婦生活を送った5代公

 44歳で急逝した4代公のあとに5代公となったウィリアム(1748~1811)は、父とは違って政治には関心を示さなかった。生涯で3度も入閣を打診されていながら、すべて断ったほどである。

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