カンボジアのフン・セン首相(右)と会談する筆者(左)(写真提供:JICA、以下同)

 2022年9月、タイに続けてカンボジアに行った。最初に行ったのは2011年で、東日本大震災の直後の4月だった。その時に二度講演をしているが、その当時のメモを見ると、冒頭に、津波の被害に対してカンボジアから寄せられた支援、激励に対するお礼を言っていたことがわかった。

日本も関与した、大虐殺からの復興

 現在、カンボジアは人口1670万人、ASEAN(東南アジア諸国連合)で7番目だが、一人当たりGNI(国民総所得)では1580ドル(2021年)とASEANで9番目であり、まだ下位の方にいる。

 

 しかし、1975年から79年にかけて起こったポル・ポト政権による組織的迫害、大虐殺、ベトナムの侵入とその後の混乱を考えると、よくここまで発展したものだと思う。

 ポル・ポト政権は、中国共産党と毛沢東の支援を受け、文化大革命の影響下で農村社会主義への転換を目指し、反対者を徹底的に弾圧した。貨幣は禁止され、メガネをかけた人間は悪しきインテリなので処刑する、というようなめちゃくちゃなことが起こったのである。穏やかな国民性のカンボジア人の中に、どうしてそのような狂気が潜んでいるのか、今でも信じられない。

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