国債大増発で日銀の苦悩は続く

執筆者:大神田貴文2009年6月号

打ち出の小槌と化した日銀。国債をひたすら引き受け続けて政府に資金を供給するが、リスクは大きい。 年収四百六十万円なのに出ていく金は一千万円。子や孫の代になっても返す当てのない借金が九千万円ある――。今年度の日本の国家予算を家計に例えれば、そんな資金繰りになる。 政府は四月、追加経済対策として十四兆円の補正予算を組み、今年度の一般会計予算は過去最高の百二兆円と、初めて百兆円の大台に乗せた。うち税収は四十六兆円に過ぎない。不足分は国債の発行でまかなう。 国債は資金繰りの非常手段だが、日銀へ無制限に押し付けることで、大量発行に歯止めがきかなくなってきた。     * 四月九日、参議院。破綻企業の続出も懸念された三月期末をなんとか乗り越え、どことなく緩んだ空気の漂う財政金融委員会で、奇妙な光景がみられた。共産党の大門実紀史議員が、日銀の白川方明総裁に対して、日本経済の社会主義化を憂えてみせたのだ。 日銀は三月の金融政策決定会合で、国債の買い入れ額を月一兆四千億円から一兆八千億円へと増やした。それだけでなく、銀行保有株式やCコマーシャルPペーパー(事業会社が発行する短期・無担保の約束手形)まで買い取り、個別企業の信用リスクまで負担。従来の役割を大きく“逸脱”する大盤振る舞いを続けている。大門氏は、こうした政策の副作用を指摘し、「行けば行くほど社会主義に近づいてしまう」と警告したのだった。実は、日銀も同じ懸念を抱いているのだが、白川総裁は自分たちの正当化で精一杯だった。日銀内では「白川総裁が大門議員に日銀の意見を代弁するようお願いしたのか」と冗談が飛んだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。