政治改革のカギを握る当世「ネット献金」事情

執筆者:野々山英一2009年6月号

小口のネット献金でオバマ氏は米大統領選を制した。一般国民が容易に政治に参画できるこの制度が、なぜ日本で広がらないのか。 西松建設の巨額献金事件で、永田町はまたもや「政治とカネ」で揺れている。小沢一郎代表の公設第一秘書の起訴で逆風にさらされる民主党は四月九日、批判の矛先をかわすため、企業団体献金の将来的全廃の方針を打ち出した。さらに小沢氏は二十八日、企業団体献金の「即時禁止」まで口にした。自民党も負けじと政治資金規正法改正の議論を進めている。 もちろん企業献金が「悪」で個人献金は「善」と決めつけるのは短絡的ではある。中小企業経営者が、少額の献金をする際、個人名の公表を避けるために企業名で献金することがある。これは形式上、企業献金だが、性格は個人献金に近い。逆に、サラリーマンでも政治家に見返りを求める悪質な個人献金を行なうこともあるだろう。 だが、営利企業が、利益を求めずにカネを使えば、それは背任になる。広い意味での「見返り」を期待しない企業献金は、本来存在しないはずだ。 そもそも、政治資金規正法は二条で、その基本理念について「政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行なわなければならない」と謳っている。企業献金の存在が「国民の疑惑を招く」事態に陥っている以上、抑制に向かわなければならないだろう。そして「深く狭く」の企業献金から「薄く広く」の個人献金への転換が自然の流れだ。

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