謎に包まれた諜報同盟「ファイブ・アイズ」に関する初の通史が、昨年秋に刊行された

 

存在自体が秘密だった諜報同盟

 ロシア・ウクライナ戦争におけるウクライナの善戦の背景に、アメリカを中心とする諜報同盟の支援が存在する。この諜報同盟とは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で構成される「ファイブ・アイズ」である。5カ国は、安全保障関連情報の共同の収集と共有を定めたUKUSA(ユークーサ)協定に基づき、世界中に通信傍受施設を展開してシギント(電波などの信号情報)収集を行っている。加盟国の協力範囲はシギント共有だけでなく、ヒューミント(人的な情報源から収集された情報)、情報評価、スパイ技術のノウハウ、訓練など幅広い。ヒューミントに関しては基本的に情報共有ではなく情報交換が主体だが、加盟国のシギント機関は事実上一体的に機能しているようだ。間違いなく世界最強の諜報同盟である。

 UKUSA協定とは、もともとは第二次世界大戦中に英米が対独および対日通信傍受のために作った情報共有の枠組み(BRUSA協定)を、1946年、冷戦に備えて目的と活動範囲を見直したものだ。実際には英米2カ国間の諜報協力は第二次世界大戦前に遡るが、UKUSA協定締結から数えても70年を超える歴史があり、国際情勢に様々な影響を与え続けている。

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