アルゼンチン・国立ラ・プラタ大学でのJICAチェア講義(JICA提供、以下同)

 2022年11月に南米のチリ、アルゼンチン、ボリビアの3カ国に行った。

 

 チリに行ったのは初めてだった。多くの日本人と同様、私がチリという国のことを知ったのは、1960年のチリ地震津波の時だった。太平洋の向こう側の国の地震が日本に被害を及ぼすということに大きな驚きを覚えたものである。その後、1987年にマレーシアのサバで開かれたアジア太平洋をめぐる国際会議に参加した時、チリやペルーの方がおられて、ああ、太平洋の彼方も隣国なのだなと思った。

 チリは面積が75.6万平方キロで日本の約2倍、人口は2000万人弱である。アンデス山脈と太平洋に囲まれ、南北に長くのびた細長い国だ。ただ、日本も結構南北に長い国である。しかし、サンチャゴの街を見下ろす丘に登ると、たしかに街は狭く、雨量も少ないので、努力して緑地を維持していることがわかる。

サケの養殖場

 チリにおけるJICA(国際協力機構)の事業でユニークなのは、サケの養殖である。1970年代に、それまでサケと関係のなかったチリで養殖を始め、世界第二の生産国となったのである。この経緯は細野昭雄『南米チリをサケ輸出大国に変えた日本人たち』(2010年、ダイヤモンド・ビッグ社)に描かれている。

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