インド大手財閥傘下の自動車メーカー、タタ・モーターズが開発した超低価格車「ナノ」がついに発売され、四月九日から約二週間の予約申し込み期間に、二十万三千件の受注が集まった。生産能力に限りがあるため、初回は十万台の限定販売。倍率二倍強の抽選で世界最安車の最初の購入客が決まる。 タタによると専用サイトは締め切り日までにヒット数が三千万件に達した。販売店を訪れた客は百四十万人にのぼり、タタは「ナノを温かく迎えてくれたインドの人々に感謝したい」との声明を発表した。だが、だからこそ疑問が残る。二十万件という受注は少なすぎないか。 タタによると一枚三百ルピー(約六百円)のナノ申込用紙は六十万枚以上売れた。申し込み百万件という事前予測もあった。落差が大きすぎる。 考えられる理由はまず価格。タタは開発中のナノを「ワンラックカー(インド英語で十万ルピー車)」と呼んでいたが、実際の価格は少なくとも約二割高い。第二に限定販売。ナノの生産能力は現時点で年五万台しかなく、たとえ十万人の中の一人に選ばれたとしても、最長の場合、来年末まで待たなければならない。第三に実物を試乗できないことへの不満。タタは台数不足からか販売店で一切試乗を認めず、客は展示車とメディア情報に頼るしかなかった。

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