大統領が主導、日韓関係改善の「属人的死角」

執筆者:塚本壮一2023年4月20日
日韓関係改善は尹錫悦大統領(左)のイニシアチブによるところが大きいが、今後に向けた危うさも (C)EPA=時事

「戦後最悪」とも評された日韓関係が、改善に向けて動き出した。2023年3月、懸案となっていたいわゆる徴用工問題を巡り、韓国政府は日本側の意向を受け入れる形で解決案を決定。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日して岸田文雄総理と首脳会談を行った。

 急速な変化は、尹大統領のイニシアチブによるところが大きい。自由、民主主義という同じ価値観を有する日本と関係改善をしない選択はあり得ない、という強い信念に基づくものだ。しかし、尹錫悦という独特のキャラクターが牽引する対日外交は韓国国内で広く支持されているとは言い難く、今後に向けた危うさも見え隠れする。

「速度調節論」を一蹴した破格の姿勢

 日韓首脳会談に先立つ3月6日、徴用工問題の解決案を正式に発表した韓国の朴振(パク・チン)外交部長官は、心なしか硬い表情に見えた。

 外交部はもともと、裁判の原告に対する賠償金の支払いを韓国政府が肩代わりするとしても、傘下の財団に被告とされた日本企業が資金を拠出することを想定していた。これに日本側が否定的な姿勢を崩さなかったことから、外交部と大統領室の一部で、交渉のスピードを遅らせた方がいいとの「速度調節論」が出たものの、尹大統領がこれを一蹴し、日本企業による拠出も求めないと決めた経緯がある。

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