マクロン「台湾発言」とは何だったのか

執筆者:鶴岡路人2023年5月5日
対中抑止メッセージの観点では、発言は極めて不用意であり、危険だった[中山大学で講演するマクロン大統領=2023年4月7日、広州市](C)AFP=時事

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2023年4月上旬に中国を国賓として訪問した後、フランスへの帰国の飛行機の中で一部メディアとのインタビューに応じ、そのなかで、「台湾の問題をエスカレートさせることは我々の利益になるのか? ならない」、「我々の問題ではないものに巻き込まれる危険がある」、「米国の家来にはならない」などと述べた。

 これらのマクロン発言は世界を駆け巡り、その余波は極めて大きくなった。そこで以下では、まずは発言の文脈を確認したい。そして、どのような意味で不用意・有害だったのかを改めて振り返るが、そのうえでここでの主眼は、この発言がもたらした、意図せざるプラスの効果である。「マクロン効果」とでも呼べるだろうか。

 実際、マクロン発言をいわば反面教師として、台湾の重要性に関する議論が欧州においても高まっている。マクロンの台湾発言については、こうした影響を含めて評価することが求められる。

文脈を理解する

 マクロン発言は、当初Politico.euが概要を英語で報じて世界的に広まったが、後に仏紙Les Echosがフランス語で一問一答形式のインタビューを掲載した。この両者の間には全体として受ける印象に重要な相違がある点に注意が必要だ。

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