「百年に一度のバブル」に独り踊る霞が関

執筆者:白石均2009年6月号

ハコモノ予算の大盤振る舞いから、政策金融民営化見直しまでの逆コース三昧。麻生政権に「改革」は不可能ということだけははっきりした。「百年に一度の霞が関バブル」 経済産業省出身の岸博幸慶応大学教授は、「百年に一度の経済危機」を奇貨として、猛然と復権を目指す霞が関の動きをこう表現している。 四月二十七日に国会に提出された十五兆円の補正予算は、高速道路の新規着工や、多大な無駄遣いが指摘されていたはずの雇用・能力開発機構や都市再生機構に巨額予算をつけるなど、改革逆行のオンパレード。そもそも、通常の年間予算のうち、国債費・地方交付税交付金・社会保障費・防衛費を除いた額は約二十兆円だから、十五兆円というのは年間予算とさして変わらない。その金額が先にありきで予算編成がなされたのだから、霞が関の各省にとっては、何でもありの絶好期なのだ。 霞が関では「予算の増査定があった」との話も漏れ聞こえた。通常の予算編成プロセスでは、各省が事業ごとに「○億円の予算をつけてほしい」と要求し、財務省主計局が査定して削り込む。ところが今回は、要求額以上に財務省が大盤振る舞いする異常事態が起きたという。 金額を水増しするには、施設整備が手っ取り早い。“国立マンガ喫茶”と揶揄される「国立メディア芸術総合センター」構想はじめ、“ハコモノ行政”も大復活。「未来への投資」を謳う研究開発予算も内実は「土建屋と機器メーカーが喜ぶハード予算ばかり」(研究機関関係者)だ。昔ながらの過ちが、かつてない規模で繰り返されようとしているのだ。

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