ロケット「千里馬1号」は5月31日朝発射されたが、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を軌道に乗せることはできなかった[KCNA VIA KNS](C)AFP=時事
 

 5月31日朝、北朝鮮が軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した運搬ロケット「千里馬1型」の打ち上げに失敗したが、国内では一切その事実が知らされていない。対外的には『朝鮮中央通信』が、「1段目分離後、2段目エンジンの始動不正常によって推進力を失い、朝鮮西海(黄海)に墜落した」との国家宇宙開発局(NADA)発表を打ち上げの2時間半後に報じていた。「さまざまな部分実験を経て、可及的に早い期間内に」再打ち上げを断行するとのことであるが、『労働新聞』や『朝鮮中央テレビ』は、失敗どころか打ち上げが試みられたこと自体に全く言及していない。

 初の偵察衛星の打ち上げという国家的イベントの失敗についていかに説明すべきか調整中なのか、今後の再打ち上げが成功する可能性を見据えているのか、現段階ではどちらも視野にいれておくべきだろうが、「光明星3号」と名付けられた「地球観測衛星」を積載したロケット「銀河3号」の打ち上げに失敗した2012年4月13日の前例とは対応が大きく異なっている。当時は打ち上げから4時間ほどで迅速に失敗の事実を認め、国内に向けてもそれを報じたため、金正日(キム・ジョンイル)時代では考えられなかったサプライズとして受け止められた。

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