「学生ローン免除は違憲」判決の影響をこうむる人は4000万人超に及ぶ[米最高裁前で学生ローン債務の減免を訴える人々=2023年6月30日、アメリカ・ワシントン](C)AFP=時事

 いまや前大統領ドナルド・トランプの最大の功績ともいわれているのが、連邦最高裁の保守化だ。トランプが4年間の任期の間に、合計3名の保守派判事を任命したことで、保守派判事が6名、リベラル派判事が3名となり、保守派が絶対多数を占めるに至った。昨年から今年にかけて、保守化した最高裁は「アクティヴィスト裁判所」と呼ばれるほど、社会を大きく保守的な方向へと揺るがす重要な判決を下してきた1。まず昨年6月、人工妊娠中絶の権利を憲法上で保障した1973年のロー対ウェイド判決を覆し、アメリカ社会を震撼させた。

 さらに今年の6月、最高裁は3つの判決でアメリカ社会に再びの衝撃を与えた。6月29日最高裁は、アメリカの大学で1960年代以降、人種差別を是正するために導入されてきた積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を違憲とした。同措置は、入試選考で、歴史的に不利益な立場に置かれてきた黒人やヒスパニック系を優遇する措置で、1970年代以降、白人から「逆差別」との批判も高まってきたが、目的を「多様性の確保」に変えつつ措置そのものは存続してきた。しかしこのたび最高裁は、積極的差別是正措置は憲法修正14条で定める「法の下での平等」に反するとしたのである。

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