交戦相手側は日米の一方に対して単独講和の揺さぶりをかけてくるかもしれない[浜田防衛相との会談に臨む米国のオースティン国防長官(左)=2023年6月1日、東京都新宿区の防衛省](C)時事

 それでは、万が一不幸にして有事が発生した際の日米同盟の出口戦略について、前節で見た〈「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマ〉という分析レンズを用いて考えてみよう。

「核」の壁、課題としての「専守防衛」「憲法9条」

 まずは日米同盟側が交戦相手に対し優勢の場合で、なおかつ「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスをめぐる認識が日米両国で一致することを想定してみる。

 この時、もし日米同盟側にとっての交戦相手の「将来の危険」が極限まで大きく、逆に自分たちの「現在の犠牲」がきわめて小さい場合、理論上は交戦相手政府・体制の打倒が追求されることになる。2015年ガイドラインでいえば「平和及び安全を回復するような方法で、この地域の環境を形成するための行動をとる」こと、また2022年国家安全保障戦略が述べる「国益を守る上で有利な形で終結させる」ことが、最大限追求されるような状況がイメージされる。

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