カーン委員長の主張はシカゴ学派の考えを覆す代替理論にはなり得ていない[連邦議会下院司法委員会公聴会に臨むカーン氏=2023年7月13日、アメリカ・ワシントンDC](C)EPA=時事

 電子商取引の巨人である米アマゾンの「不公正な競争」に、34歳のリナ・カーン委員長率いる米連邦取引委員会(FTC)が戦いを挑んでいる。

 FTCは満を持して、アマゾンの外部販売業者(出品者)向けサービス「マーケットプレイス」における優越的地位の濫用をめぐる反トラスト法(独占禁止法)訴訟を今月末にも提起する。

 カーン氏は、イェール大学の法科大学院生であった2017年1月に「アマゾンの反トラストの逆説(Amazon’s Antitrust Paradox)」と題した鋭敏な論文を発表し、アマゾンをはじめ巨大IT企業の市場独占による弊害を指摘して一躍注目を集めた。卒業後は米下院司法委員会の法律顧問を務め、コロンビア大学法科大学院の准教授として教鞭を執り、2021年6月にジョー・バイデン大統領の指名を受けてFTC委員長に就任している。

 反トラストの執行強化による競争促進はバイデン政権の経済政策の重要なのひとつであり、カーン氏の手腕には大きな期待がかかる。しかし、就任後2年を経てテック大手各社との戦いで軒並み劣勢を強いられている。

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