中国の電力消費量が減退していることなどを根拠に、政府が発表する経済成長率に疑問を唱える声が強まっている。 中国の電力消費量は、マクロ経済の成長にともなって過去数年は二ケタ成長を続けてきた。需要増に設備投資が追いつかず、例年のように夏場には電力不足に陥り、計画停電が行なわれていたほどだ。しかし、状況は金融危機で一変した。中国の電力消費量は昨年十月以降、減少に転じ、今年五月も前年同月比三・五%減と、減少傾向が続いている。四半期ごとのデータでは、昨年の第4四半期(十―十二月)は前年同期比でマイナス七%、今年第1四半期(一―三月)もマイナス四%となっている。 ところが、中国の国内総生産(GDP)は昨年第4四半期が六・八%、今年第1四半期が六・一%と、昨年前半までに比べ減速したとはいえ、高成長と呼べる水準を保っている。データ通りなら、中国社会のエネルギー効率が異常なペースで向上していることになる。 この問題については、今年一月の二〇〇八年のGDP発表の頃から専門家や海外メディアなどの間で疑問視されていたが、五月中旬には国際エネルギー機関(IEA)がレポートの中で「中国のGDPは石油、電力需要と矛盾する」などと指摘し、中国政府が発表する統計に疑問を投げかけた。電力消費量という比較的ごまかしのきかないデータに対し、中国のGDPはもともと「最終的な数字は政府の目標に沿って恣意的に修正される」(経済学者)と言われているだけに、中国人ですら多くが「さもありなん」とIEAの言い分に説得力を感じた。

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