クウェート首長の交代、次世代の皇太子には誰が指名されるのか

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執筆者:村上拓哉2024年1月7日
中東地域の中でも民主的な議会制度が整備されているクウェートには、サウジやUAEのように中央集権的な政治・経済改革を進めにくいという難しさがある[ミシュアル新首長=2023年12月20日、クウェート・クウェートシティ](C)AFP=時事

 クウェートのナッワーフ首長が2023年12月16日に86歳で逝去した。2020年に異母兄のサバーハ首長の後を継いだナッワーフはクウェート史上最高齢の83歳で首長に就任したこともあり、2021年には異母弟のミシュアル皇太子に権限を委譲し、政治の表舞台からは距離を置くようにしていた。首長就任前に40年間外相を務めたサバーハは中東域内での仲介外交で存在感を発揮したのに対し、州知事や内相、国家警備隊副司令官を歴任したナッワーフは国内問題に注力し、国内や王族間の融和に努め、短い任期ながらもクウェートの政治的安定に功績を残した。

 新首長には順当にミシュアル皇太子が就任し、12月20日には議会で宣誓と就任演説が行われた。ミシュアルは2年前から事実上の最高権力者として実務を担っていたことから、新首長就任とともにクウェートの政治方針が大きく変わることはないだろう。ミシュアルはナッワーフ同様、内務省や国家警備隊副司令官での経験を通じて国内問題に精通しており、穏健かつ清廉な人物として知られている。クウェートは中東地域の中でも民主的な議会制度が整備されているが、それ故に議会と政府の対立が常態化しており、近年にサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)で進められてきた中央集権的な政治・経済改革を断行できていない。ミシュアルは就任演説において議会と政府の双方を批判し、国民の要望に応えていく重要性を語った。

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