米英フーシ拠点攻撃で浮かび上がる「紛争地帯としての海洋」の現実

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執筆者:フォーサイト編集部2024年1月13日
過去10年にわたる爆撃がフーシ派の攻撃を抑止できなかったのに、今、爆撃を重ねればフーシ派の攻撃を抑止できるとは考えにくいとアレクサンドラ・スターク(米ランド研究所)は指摘している[パレスチナへの連帯を示し、パレスチナ旗の前で警備に当たるフーシ派の兵士ら=2023年11月13日、イエメン・サヌア](C)EPA=時事

 今週もお疲れ様でした。台湾総統選・立法委員選挙の帰趨が気になるところですが、まだ開票前ですので来週に。今回は11日に行われたイエメンの親イラン武装組織フーシに対する米英軍の攻撃を中心に取り上げました。英首相府はさらなる攻撃は計画せずとしており、事態がエスカレーションするかは不透明です。ただ、この攻撃をめぐる欧米メディアの論考からは、世界の海洋安全保障はいまとても大きな潜在リスクを抱えていることが浮かび上がります。

 米英の攻撃はフーシ派武装勢力が紅海での商船襲撃を繰り返していることが理由。実際、世界経済における商業航路の重要性は、グローバル化の進展とともにかつてなく高まりました。下記にピックアップした英エコノミスト誌の記事(「America fights back」)によれば、世界の貿易量の80%、貿易金額の50%を海路が支えています。一方で西側諸国の海軍軍備投資は慢性的な過小が続き、また世界海洋の安全保障はほぼアメリカ海軍頼みという現実も。アジアにおいても、たとえば中国が台湾を封鎖した場合には、欧米の対抗措置の影響も併せて世界のGDP(国内総生産)は5%減少すると試算されます。同記事は、この紅海の安全確保は「紛争地帯としての海洋」に対するアメリカおよび同盟国の協調対応について、ひとつのモデルになり得るという興味深い指摘をしています。

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