列強に翻弄されたスリランカの「特産物」
2009年7月号
インド洋に浮かぶ「紅茶の国」スリランカ。日本からの唯一の直行便であるスリランカ航空を使うと、十時間でコロンボの国際空港に到着する。その他の渡航方法となると、シンガポール航空を乗り継ぐか、タイ国際航空でバンコク経由、あるいは香港経由でキャセイパシフィック航空などを利用するしかない。 スリランカの政情が不安定になって以来、シンガポール航空は夜の帳が下りたコロンボ空港での離着陸を避けるため、フライトの時刻を大幅に変更した。シンガポール経由の場合は、少なくとも九時間のタイムロスを覚悟しなければならない。いつも思うのだが、世界中でこの航空会社ほど、相手国の政情をフライトスケジュールに反映させるエアラインはない。 ここ数年、スリランカと言えば、内戦のニュースが国際報道の中心である。全人口二千万人の七割を占めるのは仏教系のシンハラ人で、彼らが中央政府を牛耳っている。それに対して、人口の二割に満たずヒンドゥー教徒が多いタミル人は分離独立を求め、過激派は「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」を結成して武力闘争に訴え、首都や政府要人を標的に自爆テロ攻撃を繰り返してきた。 LTTEはインド南部のタミル人社会からの支援で、独立運動を長年続けることができた。LTTEの組織化に際しては、インドの首相直属の情報機関RAW(調査分析局)が、インディラ・ガンジー首相の時代に、資金とノウハウを提供したとされる。スリランカ内戦にはインドの影が見え隠れする。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。