[ベルリン発]ドイツに一大シロクマブームを引き起こしたベルリン動物園の人気者「クヌート」。母グマの育児放棄、育ての親の死と次々に不幸が襲いかかる悲劇の主人公が、今度は裁判闘争に巻き込まれた。クヌートが稼ぎ出した収入をめぐり、育てた動物園と所有権を主張する動物園が争いを始めたのだ。 クヌートは二〇〇六年十二月に、ベルリン動物園で誕生したオスのシロクマ。サーカス生まれの母グマ「トスカ」は双子を出産したものの、子グマに興味を示さず育児放棄したため、動物園側は子グマと母グマを引き離し、人工飼育に踏み切った。だが、一頭はまもなく死亡、生き残ったのがクヌートだった。 〇七年一月にマスコミ向けに公開されたクヌートの映像は、その愛くるしい姿が話題となり、世界を駆け巡った。二カ月後の一般公開日には世界各国の報道陣と入園者が殺到した。クヌートを一目見ようと、動物園には連日のように長蛇の列ができた。同年入園者数は前年より六十万人も増えて、三百万人を突破するほどの勢いだった。 関連グッズは飛ぶように売れ、一時は動物園の株価が三倍以上に膨れあがったりもした。さらに、銀行のキャラクターとしてキャッシュカードに印刷されたり、ドイツ政府から地球温暖化に警鐘を鳴らす環境大使に任命されるなど、活躍の場はどんどん広がっていった。〇八年にはクヌートの飼育記録などが収められたドキュメンタリー映画「Knut und Seine Freunde(クヌートと彼の友達)」が公開され、ドイツを代表するスターの座を不動のものにした。この映画は「クヌート(邦題)」として、今年七月に日本でも公開予定。クヌートの経済効果は百六十億円とも試算されている。

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