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【前回まで】財務省主計局の周防は、新設の防衛力強化資金対策室への異動を命じられた。そこには、かつて江島総理の下で、歳出半減に挑んだ“チームOZ”の面々が集まっていた。

 

Episode6 一世一代

 

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「未来創造党、江島隆盛君」

 新年度予算が可決した翌日、衆議院安全保障対策特別委員会で指名された江島は、演壇に立った。

「なんだ、まだ生きてたのか! 歳出半減のご高説はもう聞き飽きたぞ!」

 与党保守党の議員席から、ヤジが飛んでも江島は動じることもない。

 ちょうど真っ正面の壁際で控えていた周防は、江島に今なお堂々たる風格を感じた。

「フラフラ殿下」とは、格が違うな。

 江島は、咳払いを一つしてから、議員立法について提案した。

「国家防衛支援基金設立法」だ。

 米中関係の緊張感が日々高まる中、防衛費増額のための財源確保は、焦眉の急だったが、未だ確たる方策を政府は打ち出せていない。昨日成立した新年度予算でも、防衛費は予定通り増額されたが、財源については当初予定していた増税が見送られた。予算委員会で、与野党双方から厳しい質問攻めにあった大迫総理が、「来年度は行わない」と明言して、国債依存の可能性が高まった。

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