収監されることを覚悟で兵役を拒否するという17歳のイド・エラムさん(筆者撮影)

 イスラエルは、「ユダヤ国家」であると同時に「多“コミュニティ”社会」だ。一口にユダヤ人といっても、ヨーロッパ系のアシュケナジ、南欧系のセファルディ、中東系のミズラヒ、さらにエチオピア系もいる。中でもアシュケナジは、イスラエル社会のエリート層に多い。また、イスラエルに移住(アーリヤ)したものの、母親ではなく父親がユダヤ系であるために、イスラエル国内では正式には、「ユダヤ人」として認められないというイスラエル人もいる(国内で結婚ができないなどの不都合がある)。宗教に対する向きあい方によって「世俗派」と「宗教派」にも分かれる。さらに、1948年の「ナクバ」(イスラエルの建国と、それに伴うパレスチナ人の追放)の際に、イスラエル側に残ったパレスチナ系のイスラエル市民もいれば、別のアラブ系のドゥルーズの人たちもいる。ルーベン・リブリン前大統領は、こうしたイスラエル社会について「部族社会 」と表現した。

生まれた瞬間から身につく「安全保障」

 イスラエルが「国民皆兵制」を取っていることはよく知られているが、このような多様な背景を持った人々に対し、徴兵義務が一様に適用されるわけではない。ユダヤ教超正統派やアラブ系市民には、兵役の「免除」が認められている。パレスチナ人の知人によると、パレスチナ系市民の場合、軍から徴兵の令状が送られてきて拒否する人もいれば、(拒否を見越して)そもそも送られてこない人もいるという。その知人はイスラエルのパスポートを持つが、招集されなかったという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。