(C)時事[写真はイメージです]

【前回まで】江島元総理ら野党が提案した国家防衛支援基金――それは国民からの寄付で防衛費を増額する案だった。与党が呑めるはずはなかったが、大迫総理から賛成の指示が出る。

 

Episode6 一世一代

 

7

 周防と土岐が国会から戻ってくると、すぐに大臣官房長に呼び出された。

 大臣官房長の守岡宗二[もりおかそうじ]は、財務省の中でも屈指の切れ者で、周防にとっては、新人時代の教育係で怖い存在でもあった。

「先程の江島元総理が提案した法案を、どう思った?」

 お疲れ様などという労いもなく、守岡は単刀直入に問うてきた。

「苦肉の策とは言え、良い案であったかと」

「土岐君は?」

「慙愧に堪えません。財務官僚として、もっとましな法案が出せなかったのかと猛省しております」

 土岐の言葉に、周防は驚いた。

 これだけ世論が、「増税反対!」と声を上げ、「フラフラ殿下」は、財源確保を国債で逃げようとしている中、財務省として法案や新税を提案できるような状況になかった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。