妊娠検査薬はドラッグストアで中高生でも買える。だが、妊娠を切望する大人が求める排卵検査薬は医療用医薬品を扱える薬局以外では手に入らなくなり、在庫を持つ薬局はごく少ない――少子化対策が国是の日本で奇妙な事態が起きている。 きっかけは、六月一日施行の薬事法の改正。排卵検査薬の販売規制が強化されたが、医薬品の通信販売の制限などが騒がれた陰で、ほとんど報じられていない。常用してきた層でも、六月以降に家庭での“在庫”が切れて初めて変化に気づき、入手に奔走する人が少なくない。 排卵日を予測する際、検査薬は有効性の高い手段。尿や唾液で濡らせば判定可能ゆえ、使用に際しての危険性は妊娠検査薬同様ゼロに等しい。 にもかかわらず、排卵検査薬のみ、購入の道が狭められた。その背景にあるのは杜撰なお役所仕事だ。ユーザーが多く、業界の売上も大きい妊娠検査薬は元来、医療用医薬品に指定されておらず、規制強化を免れた。が、排卵検査薬の場合、非大手メーカーも多いせいか、改正法の施行まで管轄の厚生労働省は市場規模さえ掴んでおらず、あわてて調査と対策に乗り出したのは問い合わせや苦情が増えてから。少子化対策担当の総務省も事態を認識していなかった。

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