東北から始まる「道州銀行」再編の未来図

執筆者:鷲尾香一2009年8月号

 五月十五日、東北地方に全国の自治体と金融機関の注目が集まった。荘内銀行(山形県)と北都銀行(秋田県)が共同持ち株会社「フィデアホールディングス」を設立、十月一日付で経営統合すると発表したのだ。地方銀行、しかも各県の二番手銀行同士の統合話が全国の耳目を集めたのは、持ち株会社の本社が、どちらの地盤でもない宮城県仙台市に置かれるためである。 経営統合とはいえ、銀行本体の合併ではない。それぞれの銀行は、持ち株会社の傘下に入り、従来の営業地盤での銀行業務を続けるという。不自然にも思える統合形態の背景にあるのは「地元」への配慮だ。地域の有力な金融機関は、指定金融機関として自治体の公金を一手に扱う。だから県の一番手行が本店を県外に移動しようとしても簡単ではない。その間隙をついて二番手行が動いたというわけだ。ただ、二番手とはいえ、荘内・北都の両行も市町村の指定金融機関。ゆえに、地元での業務継続を約束したのだ。 それでも、「持ち株会社とはいえ、地銀が経営の中枢機能を地元以外に置くことなど考えられない。地元の自治体などにしてみれば裏切り行為に映るだろう」(大手地銀関係者)との不満が漏れる。本社が移転すれば、地元に入る法人税は減る。金融機関は地域の優良企業であり、法人税の減少が自治体の財政に及ぼす影響は大きい。荘内・北都銀の持ち株会社が宮城県に置かれたことで、山形、秋田の両県は得られたはずの法人税を失うことになるからだ。

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