俗に「種子を制すれば農業を制す」と言われるが、今中国で種子市場が注目されている。スイスのシンジェンダ、米モンサント、米デュポン系列の種子開発販売会社パイオニアなど、世界の穀物メジャーが中国市場での業務拡大を強化する一方、未成熟な国内種子産業は外資の拡大に危機感を募らせており、巨大市場を舞台にした「種子戦争」が始まりつつある。 中国の農作物の種子市場は昨年末時点で、既に五百五十億元(約八千五百八十億円)を突破した。人口増加や経済成長を背景に、潜在市場価値は九百億元に上り、世界最大とみられている。 背景にあるのは、農産物の世界的な需要の拡大。二〇〇四年の全世界の農産物総生産は四十一億トンだったが、二〇年には六十億トン、三〇年には八十億トンに拡大すると予測されている。増加分は中国などから供給されるとみられており、世界の穀物メジャーが中国市場へ関心を寄せるのも肯ける。 中国では、穀物や野菜の遺伝子組み換え種子開発を目的に、バイオ企業が独自に研究開発した特許権を持つ種子産業が拡大している。シンジェンダはすでに十億元を投じて、中国内に世界で二番目となるバイオテクノロジー研究開発センターを設立したほか、今後四年間で四億元前後を中国へ投入、中国市場への集中度を高める計画だ。またパイオニアは、〇三年から〇八年の中国での農業部門の売り上げが年平均で二〇%以上増えているという。

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