八月三十日の衆院選を前に、民主党本部の電話が鳴り止まない。大部分は、一般市民から、マニフェストに対する問い合わせ。しかも大半は「子ども手当」についてだという。「うちはどれぐらい給付されるのか」「わが家は、対象に入るのか」 子ども手当は、民主党マニフェストの目玉政策の一つではあるが、他を引き離して圧倒的に高い関心に、同党幹部ですら戸惑いを隠さない。 まず、制度を簡単に説明しておきたい。中学卒業までの子どもを持つ家庭に、子ども一人あたり月二万六千円、年間三十一万二千円を支給するというもの。二人なら二倍。婚外子にも登録外国人にも門戸は開かれる予定だ。 同時に配偶者控除は廃止され、未就学児を対象に月五千―一万円支給されてきた児童手当もなくなるが、それを差し引いても「一人一カ月二万六千円」のインパクトは大きい。年収三百万円で小学生と中学生の子どもが一人ずついる家庭では、年収は五十一万千円も増える。 子ども手当導入のための財源は五・三兆円。防衛費に匹敵する。自民党は「究極のバラマキ」と批判するが、子育て世代の中で、この政策は絶大な支持を得ている。 ただ、この制度には落とし穴がある。差し引きでプラスになる家庭がある一方で損する家庭もあるのだ。子どもがいなくて妻が専業主婦の家庭は、新たな手当はもらえず配偶者控除もなくなるので損をする。「年収六百万円、子どもなし、専業主婦」の家庭は年間三万八千円のマイナスとなる。

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