ハーメネイー最高指導者の息子モジュタバも後継候補に挙げられるが、世襲統治化への批判が根強くある[ライーシー大統領の追悼式典に参加したハーメネイー最高指導者(右から二人目)=2024年5月25日](C)AFP=時事/HO/KHAMENEI.IR

 イランのエブラーヒーム・ライーシー大統領が事故死したことは、国内外に二つの大きな懸念を巻き起こした。

後継者選出に向けて保守強硬派はまとまるか

 一つは、85歳になるアリー・ハーメネイー最高指導者の後継者として最有力視されてきた人物が急遽不在になったことによる、イラン国内の政情の混乱に対する懸念である。保守強硬派のイスラーム法学者として検事総長(2014-16)、司法府長官(2019-21)と司法畑でのキャリアを歩んできたライーシーは、2021年の大統領就任をもって、最高指導者に求められる国政全般への政治経験を積むことになった。2024年3月には最高指導者を選出する権限を持つ専門家会議の議員選挙が実施されたが、体制の意向に与する監督者評議会は保守穏健派の大物であるハサン・ロウハーニー元大統領(2013-21)等の立候補資格を認めず、意図的な政敵の排除を行った。過去最低の投票率により専門家会議を独占した保守強硬派勢力は、異論を強権的に封じ込めることで最高指導者の円滑な継承に向けて盤石の態勢を整えてきたと言えよう。

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