実刑判決を受け、海外逃亡中のタイのタクシン元首相が、帰国に向け、本格的に動き出している。元首相を支持する「反独裁民主戦線(UDD)」は、タクシン元首相の「恩赦」を求める六百万人以上の支持者の署名を、八月十七日にも国王に提出することを明らかにした。 これに先立つ七月二十六日のタクシン元首相の六十歳の誕生日を祝う集会には、「これまでの政敵の批判を許す」との元首相のメッセージが電話で伝えられたという。背景には、恩赦が決まれば、直ちに帰国し、政敵との過去を水に流すことで、タイ国民が尊ぶ「寛容の精神」に訴えたいとの思いがある。 一方で、タイ法務省が「有罪判決を受けており、刑に服してもないのに恩赦は法的に不可能」と否定的見解を表明したのに続き、恩赦請求を国王に求めるUDDの方針にも「国王を政治に巻き込むのは大きな間違い」との批判が強まっている。 ただ、「寛容の精神」と「国王」というタイ国民にとって絶対的で琴線に触れる要素を持ち出した元首相に対し、アピシット首相周辺は「対応を誤るとタクシン人気が再燃する恐れもある」と警戒感を強め、首相も「署名した人を精査して、本当に自分の意志で署名したのか確認する必要がある」と語った。

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