「DeepSeekショック」という21世紀の「ミサイル・ギャップ」

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執筆者:フォーサイト編集部2025年2月2日
DeepSeekのAIモデルは、AI開発には巨額の投資が必要だという競争の“大前提”を揺さぶった(C)AFP=時事

 冷戦期の米ソにとって、国家の命運を左右する情報の筆頭格は互いの核戦力状況でした。1950年代後半の米政府はソ連が大量の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を配備していると誤認し、ミサイル技術の遅れが致命傷になりかねないと危機感を募らせました。いわゆる「ミサイル・ギャップ」論です。

 数年後、実際にはソ連のICBM配備はごく僅かであることが判明します。しかし「ミサイル・ギャップ」は、それが誤認だと分かった上でも、ソ連の脅威の政治利用などの形で米国の国防政策に影響を与えたとされています。

 中国の新興企業DeepSeekによる“低コスト・高性能”な人工知能(AI)モデルの登場は、高価・高性能なAI向け半導体の巨人、米NVIDIA(エヌビディア)の株価を急降下させるなど「DeepSeekショック」と呼ぶべきインパクトを持ちました。当初の動揺がひと段落した直近では、看板の低コストや性能を疑問視する声も増えていますが、意識しておきたいのは技術競争における米中間の優劣が見えにくくなっていることです。

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