米国がウクライナのNATO加盟や、「安全の保証」の提供に反対すればするほど、ウクライナに対するカードが失われるという皮肉な構図も[米欧ウクライナの高官協議に臨んだルビオ米国務長官=2025年4月17日、フランス・パリ](C)AFP=時事

 ウクライナの停戦に限らず、あらゆる国際交渉に関して、関係国間の力関係を把握することが重要である。それが交渉のあり方や最終的な結果を決するからである。特に、自らを「ディール(取引)の達人」だとする米国のドナルド・トランプ大統領は、国際関係の本質はディールであるとの姿勢であり、この政権下ではとりわけ交渉が鍵になる。

 2025年2月28日の決裂した米ウクライナ首脳会談の席上、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領に対してトランプが強調したのは、「(ウクライナは)カードを持っていない」との主張だった。では米国はどれほどのカードを持っているのだろうか。

 また、その後3月11日にサウジアラビアで開かれた米ウクライナ協議では、トランプ政権による30日間の停戦案をウクライナが受け入れ、マルコ・ルビオ米国務長官は、「ボールはロシア側にある」と表現した。他方で、4月18日には、パリでのウクライナ、フランス、英国、ドイツとの協議を終えたルビオ長官が、妥結が可能か「数日以内」に判断し、無理であれば、米国は「他の問題に取り組むために手を引く」可能性に言及することになった。交渉がうまくいかないことへのトランプ政権の苛立ちが高まっているのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。