イタリア産楽器「投資対象」としての価値

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2009年9月号

過去の名品の数は減り続けるが、購入希望者は増える一方。「現代の名匠」が造る新品も“大化け”の可能性があるのだという。[ローマ発]米国の証券大手メリルリンチが六月に発表した調査結果によれば、日本には昨年末時点で個人資産(不動産を除く)が百万ドル(約九千五百万円)を超えるミリオネアが百三十六万人いるという。もしも、あなたがそのひとりで資産の長期運用を考えているのなら、イタリア北部ポー川中流の歴史ある街、クレモナに注目していい。 そこには十七―十八世紀、アントニオ・ストラディバリ、ジュゼッペ・グアルネリ、そしてニコラ・アマーティという三人の名匠が登場し、バイオリンなど弦楽器の名品を生み出した。その作品は楽器としての高い評価のみならず、今も安定した「投資対象」として各国の富裕層の関心を集めている。 百万長者には及ばずとも一万ユーロ(約百四十万円)単位の投資を検討する余裕があるという人も、クレモナの名を知っておいて損はないかもしれない。この街で現在造られている弦楽器にも今後値上がりの可能性があるからだ。近年の“利回り”は六―一〇% まず、巨匠の手になるビンテージ(名品)楽器の話から始めよう。高価な弦楽器の代名詞でもある「ストラッド」(ストラディバリ作品の略称)の取引価格は上昇を続けてきた。二〇〇五年に売買が成立した「レディー・テナント」についた値は二百三万二千ドル(約一億九千万円)。翌年、ニューヨークでクリスティーズのオークションに登場した「ハマー」は三百五十四万四千ドル(約三億四千万円)で落札された。「ビオッティ(旧名ブルーチェ)」は〇七年に英王立音楽アカデミーが三百五十万ポンド(約五億七千万円)で取得している。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。