米中両国は双方が追加関税を115%引き下げることで合意した。引き下げた関税のうち一部は90日間停止し、2国間で協議を続ける[米中閣僚級協議後、報道陣の取材に答えるスコット・ベッセント米財務長官(左)とジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表=2025年5月11日、スイス・ジュネーブ](C)AFP=時事

 中国社会の「空気」もよく変わる。

 2020年始めにコロナ禍が顕在化した時である。武漢でのコロナ封じ込めに失敗した習近平政権は、中国社会の厳しい批判に曝された。そのあまりの激しさに、この政権は大丈夫かと本当に心配したほどだ。ところがゼロ・コロナ政策で乗り切った中国は、先進諸国がコロナで悪戦苦闘する中、自国のガバナンスに自信を持ち、トランプ第1期政権の品のない中国批判に「戦狼外交」で立ち向かうと、国民は「世界大国」中国の復活を実感した。中国社会の「空気」は一変し、習近平氏は求心力を一挙に高め、22年10月の第20回党大会において圧勝した。

 ところが日の出の勢いだった習近平政権は、その直後から陰りが生じた。それは同年12月、国民の強い反発に直面して突如、ゼロ・コロナ政策を転換したことを端緒とする。その後、経済は急回復するはずだったのに、それも実現せず、24年初めには、国民の将来に対する期待値は下がり、政権への不満の高まりと求心力の低下につながった1

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