領土の「譲歩」とは何か
2025年5月28日

ウクライナにとって施政権を行使できない現実と、政治的にも法的にも領有を主張し続けることは両立する[ロシアがウクライナ東部ドネツク州に一方的に設置した「ドネツク人民共和国(DPR)」で、全長200メートルに及ぶDPR旗を広げたロシア政権与党「統一ロシア」の青年組織「若き親衛隊」の活動家たち=2025年5月10日](C)EPA=時事
ウクライナの停戦・和平に向けたプロセスには、これまでのところほとんど進展がない。ロシアに停戦意思がないという、当初から大方の専門家が指摘してきたことを、ドナルド・トランプ大統領が認識して振り出しに戻ったということだとしたら、この数カ月は無駄だったのだろうか。
ただし、停戦議論がさまざまになされるなかで、具体的な課題もより明確になった。たとえば、最終的にロシアとウクライナが何らかの妥結を目指す場合、領土をめぐる問題を避けてとおることはできない。そして、ウクライナが領土に関して「譲歩」を迫られるのも不可避だ。武力によってロシア軍をウクライナから完全に追い出すことが、現実的に困難だからである。
ただし、関連する議論のなかでは、領土に関する譲歩という言葉がひとり歩きしたり、誤解やすれ違いを招くことも少なくない。それは、領土の譲歩といったときに意味するものが不明確であり、人によって想定するものが異なるからだといえる。
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